=大沢の桜・俳句竹短冊=  

                      92歳・土 屋 要 作(平成4年)

 @大沢温泉の桜並木。             

 四十数年にわたって、俳句の短冊が吊されて来た。大沢温泉の桜並木は、温
泉街中央部の河岸に、今は桜葉の雄姿を見せている。

 昭和12年、当時中川村大沢青年団大沢支部(山本武雄支部長)が、『村人に
この花を見てもらって優しい愛の心を、そして平和の村造り』の象徴としたい。と
いう、遠大な理想の下に、50本の桜苗木が植えられたのである。

 当時、2年生の苗木というから、数えるとこの桜の樹は57歳ということになる。
その後、道路の犠牲となったものも少なくなく、補充されたりして、今は百数十本
が残っているようだ。

 A 俳句の竹短冊。

 大沢温泉の桜並木に、俳句の短冊が吊されるようになったのは、昭和21年の
春からである。敗戦の傷心を抱いて外地から、故郷に戻った多くの人々は(私も
その一人である)『国敗れて山河あり』をしみじみと味わったことである。

 4月初め、綻びそめた、桜の枝が無惨にも折られたのを見て、非常に腹立たし
く感じられたのは、私だけではなかったと思う。然らばといって『この花折るべか
らず』では、如何にも情けない。花を大切にしようという気持ちをこめて、十七文
字の俳句に諷詠し、すぐさまこれを有り合わせの短冊や色紙に書いて、桜の枝
に吊した。

   植えてくれし人ありて此の桜かな    倍 盛
   大沢の名を香らせよ花なみ木      〃
   見る人も感謝捧げなはなの枝      〃
   日本の人のこころを咲くさくら      飛 雁
   背の児も両手拡げて花ふぶき      〃
   此の花ぞ再起日本の姿かな       〃

 これが始まりで、大変な反響を呼んで、桜を大切にする様になったのである。翌
22年にはこれを行事化しようということになって、俳句グループ『那賀流会』で、同
人が俳句を出し合うことになった。

 幸い土地には苦竹(まだけ)が沢山生産されることから、これを短冊にしてみては
という、アイデアが出た。真青い竹を割って、節と節の間の白い内面に、俳句を書
いて吊したら、桜の花とのコントラストが、一層趣を増すであろうということになった。

 そして今は亡き土屋倍盛が、墨痕も鮮やかに揮毫した竹短冊を、桜の枝々に吊し
たのである。

 昭和24年には、大沢地区の若衆組【以信社】に文化部が出来た時に『青年の事
業として手伝わせて欲しい』という申し出があった。 

 日本人の心というべき桜を、愛する気持ちが芽生えたことであり、素晴らしいこと
だと、二つ返事でOKを出したことは言うまでもない。

 爾来、那賀流会が俳句をまとめると、以信社が、竹短冊造りや吊るしつけ、撤去
等の世話に当たるという、共同作業を続けて来たのである。

 初めの内は、俳句も同人だけであったが、この行事が知られるにつれて、その輪
が拡がり、県内や小田原、横浜、川崎、東京方面からの出句を迎えるようになった。
また、下関観光バスのガイドさんや観光客の句が吊されることもあって、北海道帯
広市や長野県安曇野村との姉妹都市締結もあり、郷土出身の縁故などから、北は
北海道、岩手県、新潟県、長野県、山梨県、 九州などから出句もいただいて、毎
年百数十人、600句以上の句をいただいている。

 毎年、新聞やテレビの花便りに登場するようになり、土地人は勿論、各地から竹
短冊の花を求めて、はるばるこの地を訪れるようになったのである。

 竹短冊は、350枚から500枚が吊される。こうして47年、全国からのご協力あれ
ばこそと、合掌。

 (本文はミニコミ誌「ほっとらいん」に平成4年5月に掲載されたものです)


 次に紹介するのは「ほっとらいん」同ページに掲載され、筆者(松本)が取材した
記事である。
 当時、中川村青年団大沢支部長であった山本武雄氏にお会いし、話をうかがう
ことが出来た。

 青年団の構成年齢は25歳までで、大沢支部員は14名であった。西伊豆には温
泉湧出が土肥と大沢しかなく、大沢には「新居屋」が1軒、商人宿を営むに過ぎな
かった。その前の川原の岩の割れ目から流れる温泉を共同浴場にして、村人は
楽しんでいた。
 若者達は大沢温泉が将来観光地になるであろうことと、村人の心を思って桜苗
を植樹することを申し合わせた。男日当が70銭の時代で、苗木1本が50銭だっ
た。その資金稼ぎに朝作り、夜なべ作業をした。また、籠の材料にする真竹を担
いだり、春田起こしに万能鍬を振るい、夜間には両側にカンテラを持たせて照ら
させた。
 苗木は、今でも存在する京都の「タキイ」から取り寄せた。戦中、戦後の食糧難
から土手も耕され、何本かは枯れさせられた。また、戦争は植樹した何人かの命
をも失わせ、当時植樹して生き残っているものは、桜は20本、人は3人だと、氏
は昔を懐かしむ表情で話した。              (平成4年筆記)


          第63回 大沢桜祭り俳句募集要項
                  皆様の応募を期待します
主催 静岡県賀茂郡松崎町 大沢
季      春季
出   一人4
会   整理費として一人千円
募集期間  平成20日から31必着
  伊東  平綿 春潮 先生
      横浜     大須賀 浅 芳 先生
      埼玉        水 尾 先生
     下田     土 屋   保 夫  先生
      松崎    小  林  山  人 先生

賞品 応募された作品の中から優秀作には、町長賞や観光協会長賞など盾や記念品などが
送られます。入選句は竹短冊に揮毫して桜並木に吊るし、訪れた人に観賞して頂きます。

発表句会 平成20年4月6日(日)午後1時於:大沢公民館
申し込み・問い合わせ  大沢区桜祭り事務局担当
410-3604 静岡県賀茂郡松崎町大沢1911
       山本       電話0558−43−0191
FAX 0558-43-0191  Eメールjr2qgj@quartz.ocn.ne.jp